不動産経営を法人化するメリット・デメリット

不動産経営を法人化するメリット・デメリット

近年、不動産経営を法人化することで、主に節税効果が得られるとして話題となっています。 すでに法人として運営を行っている方、また、設立を検討している方も多いと思います。 実際、不動産経営を法人化することによるメリットはあるのか? ということで、法人化のメリット・デメリットを比較してみたいと思います。

法人化することにより得られるメリット

節税効果が得られる

個人と法人では税金が異なります。個人は所得税と住民税があり、所得税は課税対象額により税率が変わります。 課税対象額が大きい程、税率も上がる累進課税方式となっています。住民税は一律10%となりますが所得税と住民税を合わせると最低税率は15%、最高税率はなんと55%になります。 一方、法人の場合は、実効税率といって法人税、法人住民税、法人事業税から成ります。法人の規模により税率は、21.42%~33.59%となります。 個人の課税所得が一定のラインを超える場合は、法人化することにより税金を軽減することができます。課税所得が900万円を超える場合には、法人の実効税率を上回るのでメリットがあると言われています。

会社として経費計上可能なものが増える

税金を算出する基となるのが、課税対象額(収入から経費を引いたもの)です。 不動産経営の場合、経費として減価償却費、借入金利子、運営経費(管理費、修繕費)、租税公課など計上することができます。 個人経営に比べ法人として経営を行う場合、家族を役員にして役員報酬などの給与を支払うことにより、経費を計上することができます。また、共済掛金や各種保険料を経費として計上することもできます。

相続税対策になる

不動産を相続人の間で平等に分割することは難しく、平等に分割するために不動産を売却してから現金を分割することがよくあります。 しかし、法人化することで相続財産は株式となりますので、相続人間で平等に分割しやすくなります。 また、個人として不動産経営をしていた場合、毎月の家賃収入が現金預金として貯蓄されます。そのため、課税対象となる現金資産が増え続けていきます。 一方、法人経営の場合は家賃収入は会社の収入となり、報酬や給与として経営に参加している親族に支払われますので被相続人に現金預金として貯蓄されません。

法人化した場合のデメリット

会社設立に手間と費用がかかる

会社を設立する際には様々な費用がかかります。一般的には定款作成費、登記費用(登録免許税、司法書士への手数料、旅費交通費など)として数十万円の開業資金が必要です。 開業にかかる費用を軽減させるために、行政書士などの外部に依頼せず自身で行うことも可能ですが、多大な時間と手間がかかります。

会社の維持、運営に費用がかかる

会社を運営していく上で発生する費用があります。 毎年の決算書作成時に税理士へ支払う報酬や、従業員の社会保険加入にかかる会社負担の費用など、法人であるが故に発生する費用です。

会社設立3年以内に相続発生した場合の税金

法人の場合、取得してから3年以内の資産の評価額は相続税評価額ではなく、通常の取引価格、いわゆる時価として評価されます。 個人の場合の相続税評価額減額が適用されないため、かえって相続税が高くなることがあります。

売却する際の税金が高い

個人所有の不動産を売却する場合は、売却した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の短期譲渡と5年超の長期譲渡に分かれます。 短期譲渡の場合は利益に対して所得税、住民税を合わせると税率が約39%となり、長期の場合は税率が約20%になります。 法人所有の場合は、利益に対して実効税率で計算されるので21.42~33.59%となります。個人所有で5年超の期間所有した場合と比べると税金が高くなります。

法人化はメリットとデメリットをよく検討してから

冒頭にも記載したように、よく課税所得が900万円を超える場合は不動産経営を法人化することにメリットがあると言われております。 上記に述べたメリット・デメリットを踏まえた上で、それぞれの状況やタイミングによって適切に判断して、より堅実・健全な不動産運用を行ってみてはいかがでしょうか。

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